第83回アカデミー賞では長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した、本格ドキュメンタリー映画。
インタビューやニュース映像、データなどを通じて、2008年のリーマン・ショック前後で何があったのかを浮き彫りにしていきます。
その中で、全編を通じて金融・経済(さらに政治も)に関する話題が取り上げられているので、関連用語や表現も自然に学べるようになっています。
こんな人におすすめ!
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『インサイド・ジョブ』はどんな映画?【あらすじ等】
では、まず基本的な情報を押さえておきましょう。
映画情報
- 原 題 : Inside Job
- 公開年 : 2010年
- ナレーター: マット・デイモン
- 監 督 : チャールズ・ファーガソン
ハリウッドスターのマット・デイモンがナレーションを担当。
金融業界の関係者、ジャーナリスト、政治家、大学教授などへのインタビューやリサーチで、あらゆる角度から経済危機の真相に迫ります。
『インサイド・ジョブ』の中で話される英語の特徴は?
全編、ナレーションやインタビュー、ニュース映像を通じた英語に接することができます。
知識人や社会的な地位が高い人が多いので、ビジネスでも使える英語表現を学ぶことができるのもポイントです。
インタビューのシーンでは、
- 礼を失しないように、聞きにくいことでも質問するための表現
- 逆に答えにくい質問を受けた時に、うまく受け答えをするための表現
に注目してみるのもよいでしょう。
場面や用語について
ドキュメンタリー映画なので、インタビュー、ニュース映像以外は、ナレーションにより進んでいきます。
金融・経済(一部は政治)の話題が中心のため、関連する表現を多数学ぶことができます。それほど、難解なものではありません。
インタビューでは、礼儀を守りながら鋭い質問をする、あるいは答えにくい質問に対して回答する際の英語表現に注目です。
登場人物が話す英語について
標準的なアメリカ英語を話す人物がほとんどです。
一部ヨーロッパの人たちが英語を話す場面もありますが、それほど聞き取りにくいということはありません。
ほんの一場面だけ、中国の人がかなり独特な発音で英語を話すシーンがありますが、多様な英語に触れる機会と捉えるとよいでしょう。
金融業界の関係者、ジャーナリスト、政治家、大学教授など、知識人や上流階級とされる登場人物がほとんどなので、スラングは全くありません。
ビジネスでも使える英語表現をしっかり学びとっていきましょう。
*ビジネス英語を学べる映画全般は以下の記事を参考にどうぞ。
私(ホズ)が、徹底的にこだわっているビジネス英語勉強法 ー それは映画を使った英語学習です。 そのおすすめ理由は記事「映画を使った英語学習をおすすめする3つの決定的理由【TOEIC950の実績あり】」で説明した通り。 そこで今回[…]
『インサイド・ジョブ』で学べる英語表現
※著作権違反とならないように、一部表現を変更している箇所(固有名詞を代名詞に変更する等)があります。
※()内は劇中でそのセリフが出てくる目安の時刻です。
株価は上昇した。
金融経済では、常に話題になる株価の動き。
「上昇する」はこのように「go up」、逆に「下落する」は「go down」をさっと使えるようにしておきましょう。
失業者数は6ヶ月で3倍に増えた。
経済においては、失業も常に話題になります。
「unemployment」は「失業」「失業者数」という意味。「unemployment rate」(失業率)も一緒に覚えておきたい表現です。
金融業界は厳しく規制されていた。
「regulate」(規制する)や「regulation」は(規制)は、この作品で何度も登場する単語。
一方で、「deregulate」(規制を撤廃/緩和する)や「deregulation」(規制撤廃/緩和)が使われる場面もあり、それが事態に大きな影響を与えていくことになります。
住宅価格は跳ね上がった。
後に崩壊へとつながる住宅市場の過熱は、映画「マネー・ショート」でも描かれましたが、やはりこの作品でも取り上げられています。
「skyrocket」(急増する、急騰する)は、まさに跳ね上がる状態が感覚的に掴めると思います。
それらは短期的な収益と利益を生み出す。
金融機関が目先の金を追い求めて、加速度的に問題が拡大していく様子です。
「revenues」(収益)から「expense」(費用)を引いて算出されるのが、「profit」(利益)となります。
彼はそれにかかる税金を全く払う必要がなかった。
ある金融界の大物が、政界に転身してその地位を利用し、課税を逃れる際の説明です。
「tax on ~」で「~への課税、~にかかる税金」という意味です。
投資銀行では現金が枯渇した。
「run out of ~」で「~を使い果たす、切らす」という意味。TOEICでも頻出の表現です。
彼は8月31日付で辞任します。
ニュースで、政府の要職を務める人物の辞任を伝える場面の英語表現です。
「resign」は「辞職する、辞任する」という意味。「effective」は「効力を発する」という意味があり、ここでは「8月31日付で」ということになります。
それには利益相反の問題がある。
金融機関に勤めていると、しょっちゅう出てくる「利益相反」という言葉。
「利害の対立」とも言いますが、英語だと「conflict of interest」という表現になります。
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『インサイド・ジョブ』で気になることを質問!【ホズが答える】
確かに堅めの内容ですが、インタビューやデータで真実を浮き彫りにしようとする構成にはグイグイ引き込まれ、関心を持って視聴できる作品です。
大手投資銀行や政治の実態はあまりにひどく、想像を絶すると言ってもよいほど。
ある意味、衝撃的な内容もあり、徐々に崩壊や真実に近づいていく展開は、まるでサスペンス映画のようにも思えてきます。
さすが、第83回アカデミー賞・長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した作品!
まさに、「Truth is stranger than fiction」(事実は小説より奇なり)を感じさせる作品です。
全体的に難しすぎるという内容ではないので、心配ありません。
金融・経済というと堅苦しく感じますが、要は人間の営みであり、欲望や腐敗にまみれた面も多く語られます。
金に物を言わせて購入した、一大リゾート地のような別荘、自家用ジェット、夜の街での豪遊…
そこにはモラルなど微塵もなく、「エリートと呼ばれる人物も、しょせん金や権力には抗えないのね…」と、人間の変わらぬ一面を見せつけられた気分になります。
『インサイド・ジョブ』のここにも注目!
米政権の重職を務めた大物も登場(主にニュース映像なのが残念)
「インサイド・ジョブ」には、アメリカの大物政治家が主にニュース映像で登場。
例えば、元FRB議長ベン・バーナンキ、財務長官を務めたヘンリー・ポールソン、ラリー・サマーズ、ティモシー・ガイトナーなどなど。
日本でもニュースや新聞でよく見聞きする名前ですよね。
この作品の製作スタッフは、彼らにインタビューを申し込んだのですが、ことごとく断られたとのこと。残念!
なお、現在、欧州中央銀行総裁のクリスティーヌ・ラガルド(金融危機当時、フランス経済経済・財政・産業相)はインタビューに応じていて、当時の米政権の対応のまずさを指摘しています。
彼女が最後にひと言、「Holy cow!」(何てこと!)が私にはやたら耳に残りました。
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