『マネー・ショート』は、リーマン・ショックを題材にした映画。
金融業界では異端の存在ともいえる主人公たちが、危機の兆候にいち早く気付き、果敢に行動を起こす姿が描かれます。
…と書くと、何だか堅い内容に感じますが、見事な脚本と演出で、見事なエンターテイメントとして楽しめる映画作品となっています。
こんな人におすすめ!
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『マネー・ショート』はどんな映画?【あらすじ等】
では、まず基本的な情報を押さえておきましょう。
映画情報
- 原 題: The Big Short
- 公開年: 2015年
- 主 演: クリスチャン・ベール、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット
- 監 督: アダム・マッケイ
金融業界に関わる4人の主人公たちを中心に物語が展開されます。
始まりは2007年。住宅市場および関連金融商品におけるリスクに気付いた主人公たちは、近く金融危機が起こると予想。
それを同時に好機ともとらえ、それぞれ果敢に行動を開始します。
当初、彼らの行動は、「アメリカの住宅市場は常に安定していて、崩壊などするはずがない」と周囲から全く理解されません。
しかし、2008年、やがて危機は現実のものに…
誰もが常識と思っていたことが、一夜で崩れ去る事態が実際に起こり、当時の混乱した状況を目の当たりにする感覚になります。
『マネー・ショート』の中で話される英語の特徴は?
金融・経済を扱った映画で堅めの英語表現も多いのですが、それと同じくらいカジュアルな会話も出てきます。
スラングや早口でしゃべるシーンも結構あり、全体的に聞き取りの難易度は高めです。
ただ、演出がとてもうまく、惹きつけられる内容なので、英語セリフもとても強く印象に残ります。
場面や用語について
オフィスの場面が多めで、その他にも出張先でのカンファレンス、会食の場面なども出てきます。
もちろん、金融・経済の用語が頻出し、特に証券(債券)、ローン、住宅市場に関する英語表現も学べます。
電話、プレゼンの場面も出てきて、通常のビジネスでも使える英語表現にも触れることができます。
登場人物が話す英語について
登場人物全員は、ほぼ全員標準的なアメリカ英語を話します。クセのある発音は出てきません。
銀行、証券、投資家といった金融業界の登場人物が多く、「確かにこんな人物、実際にいそうだね」と思えます。
どうしても金融用語は多くなりますが、難しい用語は劇中でしっかり親切に(?)説明してくれるので、あまり心配しなくても大丈夫です。
その他、適度に一般の人たちや家族との日常会話の英語にも触れることができ、よいアクセントになっています。
*ビジネス英語を学べる映画全般は、以下の記事を参考にどうぞ。
私(ホズ)が、徹底的にこだわっているビジネス英語勉強法 ー それは映画を使った英語学習です。 そのおすすめ理由は記事「映画を使った英語学習をおすすめする3つの決定的理由【TOEIC950の実績あり】」で説明した通り。 そこで今回[…]
『マネー・ショート』で学べる英語表現
※著作権違反とならないように、一部表現を変更している箇所(固有名詞を代名詞に変更する等)があります。
※()内は劇中でそのセリフが出てくる目安の時刻です。
※英語音声には音読さんを使用しています。
保険契約はない。
保険業界に勤務する身としては、ぜひ使えるようになりたい表現。
「contract」(契約)は、一般企業でもよく使われる単語ですよね。
債券はあまりにも安定している。
債務不履行の危機が迫っているとマイケルが主張すると、このようなセリフで反論を受けます。
「stable」は、ネットワークなどIT関連でも「安定している」状態を表すのによく使われる表現です。
毎月の保険料を当行にお支払いいただかなければなりません。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の契約締結を希望するマイケルに、投資銀行の担当者はこのように伝えます。
省略形で「would」が使われてるのは、「もし本当に契約するなら」という仮定のもとで話をしているからですね。
「premium」とは「保険料」のことで、私の会社でも略して「Pはいくら?」と言った会話がよく交わされています。
ちょうど今評価しているところだ。
「evaluate」は価値や能力、質などを「評価する」という意味です。
このセリフは、評価を定めるのにもっと時間が欲しい時にも使えます。
私としては、その公算が非常に大きいと考えている。
「I would say~」で「私の考えとしては~」、「strong probability」は「高い可能性」という意味です。
デフォルト率は上昇中だ。
「default rates」は「債務不履行率」ということです。
「on the rise」で「上昇中、増加中」という意味で使えます。
我々は住宅債券に投資しようとしているところだ。
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『マネー・ショート』で気になることを質問!【ホズが答える】
脚本や演出がとても工夫されていて、しっかり映画として楽しめる作品に仕上がっています。
難しい用語は、登場人物が解説してくれる場面がいくつも出てきます。
ただ、正直なところ、それでも内容はかなり難しめ。
FP資格をもっている私でも、3回くらいみて理解できたところがあり、ある程度、金融・経済の知識があった方がより楽しめるかもしれません。
特に分かりにくいのが、自分が所有あるいは関与していない債券などに対しても保険をかけられる金融派生商品、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)でしょう。
平たく言えば、「破綻する方に賭けられる仕組み」と考えると、映画の内容もよく理解できると思います。
例えば、「サブプライムローン」という言葉がセリフで出てきた時、多くの視聴者が「よく耳にするけど、具体的にはどういうものだっけ?」という疑問を抱きますよね。
そんな時、急にシーンが変わり、ゲスト出演者が「要するに、〇〇ということ」と、ものすごく身近なものに例えて、これ以上ないくらいに分かりやすく説明してくれるのです。
うまい説明を思い付くなあ、と思いますよ。(笑)
その他、主要な登場人物が、急に映画の視聴者の方を向いて、問いかけるようにセリフを言ったりするシーンもあり、飽きさせない工夫が随所にあります。
『マネー・ショート』のここにも注目!
金融危機が起きるのも当然?常軌を逸した金融機関や格付機関
金融機関や格付機関といえば、社会的信用も高く、一般に信頼できるものと認識されていますが、その実態は、欲と噓まみれ…そんなふうに描かれています。
犬の名前を使った住宅ローン申請、無価値の債権を束ねて新たな金融商品として販売、チェックをせず格付を評価などなど。
もちろん映画としての誇張はあるでしょうが、世界中に波及したインパクトを考えると、かなり実態を反映している気がします。
欲望、疑念、怒り、哀しみ…さまざまな感情のもと発せられるセリフには迫力があり、英語表現もしっかり頭に焼き付く感じがします。
一緒に見ると、さらに理解が深まる映画『インサイド・ジョブ』
同じくリーマンショックを扱った映画として紹介したいのが、『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』です。
ナレーションやインタビュー、ニュース映像などで構成されるドキュメンタリー映画で、『マネー・ショート』と合わせて見ることで、より実態が理解できるようになります。
本当に、金融業界や政界の癒着、腐敗は凄まじいのひと言。さすがにアメリカは、負の側面も規格外のスケール…!
翻って日本でも、スケールの違いはあるにしろ、似たような構図は絶対あると思わされます。
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