これから開発しようとするシステムやウェブサイトについて、ユーザーや業務部門の担当者から「いつ本番公開できますか?」と聞かれることが結構あります。
こういった質問を受ける度に、私は内心
「はあ、分かっていないなあ…」
とつぶやいてしまいます。それはなぜだと思いますか?
「このシステム、いつ公開できますか?」と聞いてはいけない理由
なぜなら、その質問をすること自体、開発側に全てまかせておけば(丸投げしておけば)自分は何もしなくてもOK!と考えていることを示しているからです。
「それだけ信頼されている証拠では?」と思う人もいるかもしれませんが、私はそう好意的に受け取ることができません。
ソフトウェアやシステム開発では、大規模で重要なものであるほど、ユーザー側のオーナーシップが不可欠なのです。
具体的には、ユーザー側で要件定義の作成、受け入れテスト(UAT)の実施が必要です。
それらのタスクにどのくらいリソースを割き、どのくらいの時間をかけられるかは、開発側の責任でコントロールできるものではありません。
極端な話、開発は完了しても、ユーザー側でUATを実施してくれなければ、いつまでもリリースできない…ということにもなってしまいます。
ユーザー側の適切な聞き方と、IT側の適切な答え方は?
したがって、ユーザーからIT側に聞くのであれば、要件を明確にしたうえで、
「開発はいつまでに完了できそうですか?」
「我々の方で、受け入れテスト(UAT)はいつ頃開始できそうでしょうか?」
「UATを2週間で終える前提だと、いつ頃公開できそうでしょうか?」
といった聞き方が適切です。
もし、あなたがIT側の担当で、ユーザーや顧客から「いつまでに公開できますか?」と聞かれてしまい、どうしても答えなければならない状況になったら、
「明確な要件定義を〇〇日までに提示していただき、UATを○○営業日で完了いただける前提であれば、〇月〇日頃に公開できる見込です」
というように、前提を明確にしたうえでの答え方になるでしょう。
ただ、そう伝えた後、ユーザー側に前提部分がきちんと理解されず、公開タイミングの部分だけが独り歩きしてしまう危険性もあるので、十分な注意が必要です。
あまりに不確実性が高い場合の伝え方は?
残念ながら、当事者意識が弱い、あるいは欠如している業務部門、ユーザー部門の担当者が多いのも現実です。
もし、彼らがIT部門やITベンダーのことをビジネスの重要なパートナーではなく、下請けくらいにしか考えていないとしたら、とても残念なことです。
しかも、そうしたユーザーは、曖昧な要件しか提示してこないといったことも多いのです。
あまりに不確実性が大きい場合は、
「現時点では未確定の事項が多いので、公開時期についてはまだ何とも言えません」
とはっきり伝えることも必要です。
そのうえで、あらためてユーザーに積極的な関与が必要であることを訴えて、理解してもらうように努めましょう。
あと、以下は念のため…
もしあなたがIT側のプロジェクトマネージャーやITベンダーの営業といった立場の場合でも、開発者に対して「いつ公開できますか?」という聞き方はしないように注意しましょう。
「公開タイミングは、開発側の都合だけで決められるものではないのに。この人はダメそうだな…」
と思われてしまいかねませんので。