現在、私は大小さまざまな開発案件のために、要件をまとめて外国人のシステムエンジニア(SE)やIT開発者に伝える機会が頻繁にあります。
英語を介してとなると、要件定義書や指示書の作成・説明にはいっそうの留意が必要ですが、ポイントを押さえることで相手にきちんと理解してもらいやすくなると実感しています。
そこで、今回は特に念頭において置くべきコツ(TIps)をご紹介します。
あなたがもしSEや開発者の場合は、以下の点を意識して要件の作成や説明をしてほしい旨伝えるとよいでしょう。または自分から以下の点を意識して質問するのも効果的です。
Requirement Definition – 要件定義の書き方、伝え方5つのコツ
①まず、背景、目的を伝える
つい、すぐに要件詳細を説明してしまいそうになりますが、まず背景、目的を伝えるとSEや開発者も要件が理解しやすくなります。
また、開発にあたって、どの点が重要で優先すべきかを判断する基準にもなり、よりよい成果物につながりやすくなることも期待できます。
「Object First」といったところです。
②概要から詳細へ
要件はまず概要を伝え、細部(詳細)に入っていく説明が効果的です。詳細説明の一つとして具体例を挙げるのもよい方法です。
また、詳細の説明が長くなり、「全体が見えにくくなったかな?」と思った時には、もう一度まとめとして概要(要約)を伝えるのもよいでしょう。
③正確に伝えるのが難しい、複雑な要件は言い換えた説明を使う
細かいロジックや挙動など、なかなか正確に理解してもらうのが難しいこともあります。
これでは正確に伝わらないかも…と思ったら、別の見方や表現に言い換えた説明も加えるようにしましょう。
一つの説明で伝わらなくても、別の言い方の説明により、コアとなる部分を理解してもらいやすくなります。
以下は全て「言い換えると~」の英語表現ですので、ぜひ使ってみてください。
- In other words, ~
- It means that ~
- Which means that ~
④視覚的に、直感的に分かるように工夫する
英語でのコミュニケーションとは離れてしまいますが、視覚や直感に訴える方法は非常に有効です。
例えば、スクリーンショットをとって修正対象箇所に〇を付けて明示、処理前と後の画面イメージを並べてどこが変わるのかを明示等、文章を読まなくても直感的に分かるようにする工夫も有効です。
⑤いざとなったら直接話す!
認識違いが重なる等、複雑な状況になってきたら、最後はこれですね。
実際の画面を見ながら、「ここがね…」と指し示すことができますし、相手の様子をみて「うーん、あまり伝わってなさそうだな…」と思ったらさらに追加で説明をすることもできます。もしかしたら、こちらが気づいていない問題が何かあるのかもしれませんし、相手が何に困っているのか理解する機会になるかもしれません。
直接話すのはスピードも効果も抜群ですが、記録に残らないので、ドキュメントやメールも組み合わせるとよいでしょう。
要件定義に関連して、気を付けたい基本の2点
さらに、ごく基本的なことですが、以下の2点も意外にできていない人が多いので、気を付けるようにしましょう。
①ウェブサイトやウェブアプリケーションでページを指す時には、必ずURLを書く
要件定義や指示書作成の際、何となく関係者感で広まっている画面名を使ってしまうことも多いと思いますが、ページを一意に決めるのはあくまでもURLです。日本語、英語にかかわらずウェブの世界では共通の情報となりますので、必ず明示しましょう。
私の勤務する保険会社では、例えば契約照会画面と言っても、契約照会ができる画面は複数存在するので、関係者間で別の画面をイメージしてしまい、開発後に手戻りが発生という失敗例が過去ありました。もしURLで対象画面を特定していたら、このような心配は起きなかったでしょう。
②期限について伝える
重要プロジェクトでは、本番リリース日やUAT等のテスト期間が正式に決まっていることも多いと思いますが、小規模な案件では詳細なスケジュールまでは決まっていないこともあります。
そのような場合、「急ぎでお願いしたつもりだったのに、全然着手されていない…」といった事態にならないように、きちんと期限を伝えましょう。
テスト開始のために開発を完了させてほしい期限なのか、本番公開のための期限なのかもはっきり分かるように伝えます。
期限や締切は「deadline」「due date」が使えますが、一緒に目指すべき目標の期日という意味を込めて「target date」を使うこともあります。
さて、ここまで述べてきたことは、実は英語を使うか否かにかかわらず、要件定義では常に心掛けておくべきことです。
上記の点一つ一つに留意して取り組めば、きちんと伝わる要件定義書や指示書が作成できるでしょう。